コートで出会った仲間たちの話——ピックルボールが繋いでくれた縁

ピックルボールを始めたのは、もともと「軽い運動になればいいな」くらいの気持ちだった。まさかそこで、これほど濃い人間関係が生まれるとは思ってもいなかった。スポーツって不思議なもので、コートの上に立った瞬間、年齢も職業も関係なく、同じ目線になれる。今回は、ピックルボールのコートで出会った仲間たちのことを、思い出しながら書いてみようと思う。

最初のコートで出会った「謎の常連おじさん」

初めてピックルボールのオープンプレーに参加したとき、ひとりやたらと上手いおじさんがいた。名前を聞いたら「タケさん」と言って、それ以上は教えてくれなかった。年齢を聞いても「さあ」とかわされる。謎多き人物だった。

でも、プレー中はめちゃくちゃ丁寧に教えてくれるんだ。「そのサーブ、もう少しスピンかけてみ」とか「ノンボレーゾーンでの立ち位置、もうちょっと前に出たほうがいい」とか。最初は少し怖い印象だったけど、試合後にベンチで話してみたら、元々テニスをずっとやっていて、退職後にピックルボールに出会ったとのこと。「テニスより膝に優しいし、何より試合になるまでが早いのが好き」って言ってた。その一言、すごく刺さった。確かにピックルボールって、初心者でも数回練習したらゲームが楽しめるスポーツだもんな。タケさんは今でも週3でコートに来ていて、いつの間にか俺の師匠みたいな存在になっている。

20代の女性ペアと組んだ時の話

オープンプレーでは基本的にランダムにペアを組む形式が多い。ある日、20代前半くらいの女性ふたり組と一緒になった。最初は「うまく合わせられるかな」と少し緊張した。でも、プレーしてみたら驚くくらいスムーズで、むしろ俺が足を引っ張ってたくらいだった。

聞いてみたら、ふたりは大学時代の友人で、最近一緒にピックルボールを始めたとのこと。「バドミントンの経験があったから感覚が似てて入りやすかった」と言っていた。確かにピックルボールはバドミントンやテニス、卓球の要素をミックスしたようなスポーツだから、他のラケット競技の経験者はなじみやすいんだろう。ゲームが終わってから連絡先を交換して、今でもたまに一緒に練習している。年齢も違うし、ふだんの生活圏もまったく重ならないのに、コートの外でも普通に友達感覚で話せるのがすごく面白いと思う。

60代夫婦から学んだ「楽しむ」という技術

コートに来るたびにふたりで参加している夫婦がいる。ヒロシさんとサチコさん、60代のカップルだ。ふたりのプレースタイルはとにかく楽しそうで、ミスしても笑って、決めても笑って、試合の流れをとにかく楽しんでいる感じがする。

一度「なんでそんなに楽しそうなんですか」と直接聞いてみたことがある。ヒロシさんはしばらく考えてから「勝とうとしてないからかなあ」と言った。負けてもいい、というわけじゃなくて、「今日ここに来てプレーできていること自体が楽しい」という感覚なんだと。それを聞いてから、俺のプレーが少し変わった気がする。ミスをしたとき、以前はちょっとイライラしていたのに、最近は「次で取り返せばいい」と自然に切り替えられるようになってきた。ふたりから学んだのは技術じゃなくて、スポーツとの向き合い方だったと思う。

SNSで知り合った遠方プレイヤーとの初対面

ピックルボールのコミュニティはSNSでも活発で、いくつかのグループに参加していると全国各地のプレイヤーと繋がれる。そのなかで、やたらと熱量高く情報を発信しているケンジさんという人がいて、半年ほどオンラインで交流していた。

そのケンジさんが東京に来るタイミングがあって、一緒にオープンプレーをしてみることになった。初対面だったけど、コートに立った瞬間に「あ、この人と話したあの感じだ」ってなった。不思議な感覚だった。スポーツって、プレースタイルにその人の性格が出る。ケンジさんのプレーは会話そのままで、積極的でテンポが良くて、でも相手を見ている感じがした。試合後に飯食いながら盛り上がって、気づいたら4時間くらい経っていた。ピックルボールがなければ絶対に会わなかった人だと思う。

コートが「サードプレイス」になっていた

家でも職場でもない、自分がリラックスできる第三の場所をサードプレイスと呼ぶ。俺にとって、気づいたらピックルボールのコートがそれになっていた。

仕事が忙しかったり、なんとなく気分が乗らない日でも、コートに行くと仲間がいて、自然と体が動いて、終わる頃にはなんかすっきりしている。「また来週もここに来ればいい」という感覚が、日常の安定感を作ってくれている気がする。タケさんもいるし、大学生コンビもいるし、ヒロシさんサチコさんもいる。それぞれ全然違う人生を歩んできた人たちが、同じコートの上で同じボールを打っている。それだけのことなんだけど、それがすごく豊かだと思う。

ピックルボールを始めて約1年半、正直なところ技術の伸びよりも、人との繋がりのほうが大きな収穫だと感じている。コートで出会った仲間たちは、教えてくれる先輩であり、一緒に楽しむ仲間であり、時には人生の視点を変えてくれる存在でもある。これからもっとコートに通い続けて、また新しい出会いを重ねていきたいと思っている。もしピックルボールを迷っている人がいたら、技術とか勝ち負けより先に、とりあえずコートに出てみてほしい。きっとそこに、想像してなかった出会いが待っていると思うから。

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