コートで出会った仲間たちの話——ピックルボールが繋いだ意外な縁

ピックルボールを始めたとき、まさか「ここまで人間関係が広がるとは思ってなかった」というのが正直なところだ。最初はなんとなく「テニスより手軽そう」「体への負担が少なそう」という理由で踏み出したにすぎない。でも気づいたら、コートの上で笑い合える仲間が何人もできていた。今日はそんな、ピックルボールを通じて出会った人たちの話をしてみようと思う。

はじめてコートに立った日、声をかけてくれたおじさん

最初にコートに行ったのは去年の秋ごろだった。近所の公園に新しくピックルボール用のコートが整備されて、「ちょっと見に行こうか」くらいの気持ちで出かけた。ラケット……いや、正確にはパドルも持っていなくて、完全に見学モードだったんだけど、そこでいきなり「やってみる?貸してあげるよ」と声をかけてきたのが田中さん(仮名)だった。

60代くらいのおじさんで、毎週末ここに来ているらしい。話し方がすごく気さくで、ルールをざっくり教えてもらいながら一緒に打ち合った。ボールがポコンと飛ぶあの独特の感触、そして「キッチン」と呼ばれるノーボレーゾーンの存在に「なにそれ面白い」ってなったのをよく覚えている。田中さんがいなかったら、たぶん見学だけして帰っていたと思う。人との縁って、ほんとに些細なきっかけで始まるんだなと感じた瞬間だった。

20代から70代まで混ざって打ち合う不思議な空間

ピックルボールのコートで驚いたのは、年齢層の幅広さだ。テニスサークルだと割と同世代が集まりやすい印象があるけど、ピックルボールのコミュニティはそれが全然違う。自分は30代前半なんだけど、コートには20代の大学生もいれば、70代の現役プレーヤーもいる。

特に印象的だったのが佐々木さん(仮名)という72歳の女性だ。動きはゆったりしているのに、ボールのコントロールが恐ろしく正確で、最初のうちは全然勝てなかった。「ピックルボールはパワーじゃなくて頭を使うスポーツだから、年齢は関係ないのよ」と笑いながら言われたとき、なんか目からウロコだった。スポーツに対する思い込みが一気に崩れた気がした。年齢を言い訳にしない姿勢、すごくかっこいいと思う。

ダブルスを組んで気づいたこと——信頼ってこういうことか

しばらくするとダブルスでゲームに参加するようになった。そこで組むことになったのが、山田さん(仮名)という40代のサラリーマンだ。最初は「とりあえずよろしく」くらいの感じだったけど、試合を重ねるうちにだんだんお互いの動き方がわかってくる。

「あ、この人はここに来る」「そっちは任せた」という無言のコミュニケーションが生まれてくると、ダブルスが急に楽しくなる。試合後にコートの端でああだこうだと反省会をするのも好きだった。ピックルボールを通じて初めて会ったのに、なんか昔からの友達みたいに話せるようになっていた。スポーツって、言葉以上に人を近づけるんだなとあらためて感じた。

山田さんは仕事のストレスを発散するためにコートに来ていると言っていたけど、今では「コートに来るのが一週間の楽しみ」になったと話してくれた。それ、すごくわかる気がする。

県外から来た旅行者と一緒にゲームした話

ピックルボールのコートには、旅行中に立ち寄るプレーヤーもいる。先月、たまたまゲームに混ぜてほしいと声をかけてきた男性がいて、聞けば関西から出張ついでに寄ったとのこと。「地元のコートで仲間と打てるのがピックルボールの良さ」と言っていて、なるほどと思った。

パドルと運動靴さえあれば、どこのコートでもすぐに打てるというのがピックルボールの強みだ。テニスより短い時間でゲームが完結するし、ルールもシンプルだから初対面でもすぐに一緒に遊べる。その男性とは2時間ほど一緒にプレーして、連絡先を交換した。今でもSNSでたまにやり取りしている。スポーツが生み出す縁って、地域や世代を軽く飛び越えてくれる。

コートの外でも続く関係——ご飯に行くようになった

コートで仲良くなった数人と、最近は試合のあとにご飯に行くようになった。テーマはだいたいピックルボールの話なんだけど、気づいたら仕事の愚痴とか趣味の話とか、全然関係ない話で盛り上がっていることも多い。

思い返してみると、大人になってから純粋に「友達」と呼べる関係を新しく築くって、意外と難しい。社会人になると出会いが職場や既存のコミュニティに限られがちで、どこかビジネスライクな関係になってしまう。でもピックルボールのコートで出会った仲間は、利害関係なしに純粋に楽しさで繋がっている感じがして、それがすごく心地いい。「スポーツを通じた友情」って、青春っぽくてちょっと照れくさいけど、ほんとにあるんだなと実感している。

ピックルボールを始める前の自分に「コートで友達ができるよ」と言っても、たぶん信じなかったと思う。でも実際にそれが起きた。年齢も職業もバラバラな人たちが、小さなボールを挟んで笑い合える場所——それがピックルボールのコートだった。これからもこの縁を大切にしていきたいし、もし迷っている人がいたら「とりあえずコートに行ってみて」と背中を押したい。きっと誰かが声をかけてくれるから。

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